建設業許可の経営業務の管理責任者とは?

軽く、Youtubeでも動画をアップしています。

こんにちは。
大阪府吹田市の行政書士いわた事務所です。

建設業許可取得の要件のひとつに、「経営業務の管理責任者」があります。
一定の年数の経営経験が必要で、専任技術者のように「国家資格」でなることはできません。

令和2年10月1日の建設業法改正にて、「多少の許可要件の緩和」が行われました。

この記事では、建設業許可を受けたい方に向けて説明しています。

1.経営業務の管理責任者の役割は?

経営業務の管理責任者の役割は、資金調達、資材の購入、技術者や労働者の手配、下請の手配などを行います。
適正な経営を確保するための「経営のプロ」です。

そのため、次の経験を持つ者しかなることができません。

  1. 常勤の役員や個人事業主などの地位にある者
  2. 経営業務の管理責任者として経験があること

「常勤」とは、休日を除き毎日会社に出勤し、所定の時間中職務に従事することをいいます。
他社の常勤役員とは、兼務することはできません。
非常勤役員、社外取締役なども対象外です。

建設業は、工程管理や資金繰り、労務管理などの経営管理が重要です。
もし倒産をしてしまうと、施主に与える悪影響が計り知れませんからです。

2.経営業務の管理責任者になるには?

経営業務の管理責任者になるには、「現在の地位」+「過去の経験」が揃わなければ要件を満たせません。

「現在の地位」とは、常勤の取締役、個人事業主や支配人等です。
令3条使用人の地位では、経営業務の管理責任者になることはできません。

令和2年10月1日の建設業法改正により、経営業務の管理責任者になるのは2つのパターンがあります。

  1. 1人で経営業務の管理責任者になるパターン
  2. チーム体制で経営業務の管理責任者になるパターン

1人で経営業務の管理責任者になるパターン

従来通りの一人で経営業務の管理責任者になるパターンで、多少要件が緩和されています。
定められている条文から、3つに細分化されています。

  1. 建設業の役員として5年以上の経験
    建設業の取締役や個人事業主、令3条使用人として5年以上の経験がある方です。
    以前は「申請する業種の経験なら5年、他業種の場合は6年」とされていた建設業の経験の経験に関して緩和され、業種は問わないことになりました。
  2. 「経営業務の管理責任者に準ずる地位」として5年以上の経験
    「準ずる地位」とは、取締役会の決議を経て、取締役会または代表取締役から具体的な権限移譲を受けた者です。会議で決められた人でないとNG。
  3. 「経営業務の管理責任者に準ずる地位」にあるとして、経営業務の管理責任者を補佐する業務に6年以上従事した経験
    資金調達や契約の業務全般を担った経験がある方で、個人事業主である父の経営業務全般を補助した子などが値します。

チーム体制で経営業務の管理責任者になるパターン

今回の要件緩和により、「チーム体制」での要件が追加されました。
直属の「補佐者」を置くことになります。

  1. 建設業の役員経験が2年以上(建設業の役員等に次ぐ地位での経験を合わせて5年以上) + 許可を受ける会社で、建設業の財務管理、労務管理、業務管理について役員等に次ぐ職制上の地位の経験を3年以上有する者
    経営経験の例として、「建設業役員経験2年 + 執行役員や財務部長として3年経験」などです。
  2. 建設業の役員経験が2年以上(別の業種での取締役経験を合わせて5年以上) + 許可を受ける会社で、5年以上の財務管理・労務管理・運営業務の経験がある方が在籍していること
    の経営経験の例として、「建設業役員経験2年 + 建設業ではない役員経験3年経験」などです。

財務管理・労務管理・運営業務の経験とは、以下のことを言います。

  1. 財務管理の業務経験
    建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験(役員としての経験を含む)です。
  2. 労務管理の業務経験
    社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験(役員としての経験を含む)をいいます。
  3. 業務運営の業務経験
    会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験(役員としての経験を含む)をいいます。

財務管理・労務管理・運営業務の補佐は、1人でも兼務OKです。
他社で経験を積んだ経験は、使えません。
そのため、現在の会社が設立から5年未満の会社は、このパターンは使えません。

チーム体制の活用については、組織図、業務分掌規程、過去の稟議書、人事発令書等の資料が必要になり、許可行政庁に事前相談をした方が良いでしょう。

その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき、同等以上の経営体制を有すると認めたもの(大臣認定)というものがあります。

常勤役員等の過去の経営経験について

3.工事契約には請負と常用がある点

建設業の経験ですが、請負で建設業をやっていた経験です。
工事契約には、請負と常用があります。

請負は事前に定めた作業範囲を、遂行したときに代金を受領できる契約です。
労務費から材料費、運搬費、機械費など、すべて込みの金額が一般的です。

対して常用は、一定の仕事を決められた時間で実施して代金を受け取る契約です。
1人の作業員が1日働く労働量を、1人工として計算します。
材料や運搬費などは発注元が負担することが一般的で、費やした労務費相当をもらえます。

請負だと工事経験として認められるが、常用だと工事経験として認められません。

請負いも常用も世間一般では、建設工事をしていることになるのだけど、
許可を取得するには、完成を請負う工事しか認められないので注意が必要です。

4.証明する確定申告書の注意点

証明する経営経験ですが、大阪府では以下の3つの書類が重複する期間が経験経験としてカウントされます。

  • 確認申告書(税務署の受付印又は受審通知あり)
  • 工事の契約書や注文書
  • 全部事項証明書

確定申告書が5期分だけだと、確定申告書の初月から最終年月日まで注文書等が揃っている必要があります。
確定申告書は余裕を持って、6期分用意された方が良いでしょう。

また確定申告書に給与所得があると、経営していないということで認められません。
給与所得が計上されている場合は、事前に役所に確認した方が良いでしょう。

確定申告をしていない場合は、過去に遡って税務申告をします。
その場合は、無申告分の税金が発生します。

申告はしたけれど控えが残っていない場合は、管轄の税務署に個人情報開示請求を行うことで、
税務署控えのコピーを入手できます。

1、2カ月と時間を要するため、早めの準備が重要です。
個人情報開示決定通知と一緒に、役所へ提出することになります。