遺言書とは何か?

遺言書に記載すべき

遺言書と遺書の違い

「遺言書」と「遺書」は言葉が違うだけでなく、内容も全く違うものになります。
「遺書」とは、死ぬことに対する私的なメッセージです。
書き方は自由で、特段何の決まりもありません。
そのため、法的効力は全くありません。

「遺言書」は、遺産分割の分け方を指示する法的な書類です。
形式や内容は法律で決められています。
自分の財産を特定の人に残したいのであれば、法律に従った「遺言書」をつくる必要があります。

「遺言書なんて大げさな」と拒否反応を示す方も多いです。
しかし遺言書を作るメリットはありますし、意外と作るのは簡単です。
両親や親せきで相続を経験したことがある方は、相続手続きの大変さは理解できるのではないでしょうか。 将来配偶者や子供たちに迷惑をかけたくないと思うのであれば、遺言書を作ることをお勧めします。


紙に書き残すことが大切

相続問題は、亡くなった人が遺産の処分などをどのように考えていたのか、ハッキリしないということが原因にあります。
相続人がそれぞれ勝手な解釈や思惑で言い出すと、なかなかまとまりません。
自分の希望を心にしまわずに、紙に書いておくということが大切です。
市販のエンディングノートを使って書いておくことも良いでしょう。
口約束だと、あとで「言った」「言っていない」のトラブルになります。
例えば、以下のことを紙に書いておくと良いでしょう。

その他様々なことが考えられますが、遺族に紙で意思表示をしておくということが重要です。
ただしメモやエンディングノートでは法的効力はありませんので、財産をどのように相続させるかということは、「遺言書」という法律に沿ったかたちで書き残しておくと安心です。


遺言書があると相続手続きが楽になる

遺言書があると、遺産相続の手続きが楽になります。
遺言書がない場合、相続人全員で話し合いをし、その内容を遺産分割協議書にまとめて、全員分の印鑑証明書を添付します。
相続人の数が多い場合、相続人が遠くに住んでいる場合、相続人どおしが疎遠の関係である場合など、とても大変な手続きになります。
場合によっては、話し合いがまとまらず、相続手続きができなくなる可能性もあります。 きちんとした遺言書があれば、相続人での話し合いは必要なくなります。
財産を受け取る人の分だけの書類で、相続手続きができます。
遺言書があると、相続手続きが楽になります。

遺言書が無い場合

遺言書が無かった場合、遺族は煩わしい相続手続きをする必要があります。

  1. 預金通帳やクレジットカード、郵便物などを調べて、財産や借金を探し出します。
  2. 通帳の無い口座や、ネットで株取引をしていた場合など、なかなか遺族が全てを把握するのは困難な状況になります。

  3. 生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、不動産の登記簿謄本や預貯金の残高証明書など、相続手続きに必要な書類を全て集めます。
  4. 結婚や離婚、役所のシステム変更で、戸籍が変わるため全てを揃えるのに時間を要します。相続人全員に関わるため、全ての書類を集めるだけで数か月を要したりします。

  5. 相続人全員でどの財産を相続するかを話し合い、遺産分割協議書を作成します。
  6. 全員が納得する分け方を決めることは難しく、周囲の口出し等もあるため面倒になる可能性が高くなります。

  7. 遺産分割協議書をもとに、預貯金や不動産の名義変更手続きを行います。
  8. 遺産分割協議がまとまっても、不満を抱える相続人がいれば後に争いになることもあります。相続人全員が気持ちよく納得することは、なかなか難しいと考えた方が良いでしょう。


遺言書はいつ用意する?

いずれ遺言書を作るつもりだけど、もっと年をとってからでいい。
遺言書は、高齢者が作るというイメージかと思います。
法律では、15歳以上になれば、遺言書を作ることができます。
仕事を引退した人より、働き盛りの人の方が残される家族が困難に陥ります。

自分の死期を確実に予測することは不可能です。
平均寿命で直ぐに亡くなるわけでもなく、長生きする方は沢山おられます。
若く健康な方が、事故や病気で亡くなることも少なくありません。
相続は、突然やってきます。
死ぬまでに財産を使い切るつもりなので、相続対策は必要ないと考えておられる方もおられます。 しかし実際は、そういうことは不可能です。
予め寿命を予測し、財産を使い切ることは現実的ではありません。
所有財産をどのように使い、どのように家族に残すことを考える方が、現実的でしょう。

遺言書は重い病気になったり、死が間近になってから作ろうとしても手遅れです。
きちんとした遺言書を作るには、時間とエネルギーが必要です。
また判断能力が低下して遺言書を作ると、遺言書が無効になる恐れがあります。
遺言書を作るのに、早すぎるということはありません。
自分のため、残される家族のためにも、若い方も遺言書を作っておくことをお勧めします。


遺言書に記載すべき内容について

遺言書の方式には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」とあります。 「配偶者に全ての財産を相続させる。」という内容でも、法的に有効です。
しかし他に相続人がいる場合、遺留分を侵害することになり争いになる可能性が高くなります。
遺言書をスムーズに執行されるようにしたい場合は、公正証書遺言で遺言執行者をつけた方がよいでしょう。

誰にどの財産を相続させたらよいかを決めることは、意外と難しいことです。
長男にこれをあげたら、二男が不満を持つのではないかと、様々と迷いが生じます。
残された家族を考え、まず誰の生活を守りたいのか?を考えることが重要です。
そして他の相続人に配慮し、なぜこの内容の遺言書にしたのかを「付言事項」として書くようにしたほうが良いでしょう。
遺言者の想いを書くことで、遺言書の内容に納得してくれる可能性は高まります。

もし、妻に相続させたいが、先に妻が亡くなっていたことを考えて長男に相続させておくかと迷っている場合は、予備的遺言という方法があります。
妻に相続させるが、妻が亡くなっていたら長男に相続させるというように、段階的に相続させることを指定できます。
妻が亡くなってから再度遺言書を書きなおすということもできますが、その時には遺言書を書く気力が無かったり、認知症になっているかもしれません。
そういうことを踏まえて、予め予備的遺言で作ることは有効な手段です。
公正証書遺言で予備的遺言を作ると、手数料が高くなることがありますが、メリットを考えると大いに意義があるでしょう。

相続人に公平に相続させたいのであれば、今までの関係を思い出し、どれだけ経済的に支援をしてきたのかを考え直します。
大学まで出したか、結婚資金や事業の支援、マイホーム購入の支援などの経済的支援を考慮します。 また看病のための貢献度や、事業の手伝い等も考慮します。
相続では、相続人への経済的支援を「特別受益」、看病などに貢献した分を上乗せする「寄与分」という制度があります。
そういう制度を考慮し、自分が遺言した理由を付言事項に明記することで、相続人たちに納得をしてもらいます。


遺言書に書けること

遺言書には、どんなことでも書けます。
しかし、全てが法的に有効になるわけではありません。
具体的には、次のような内容が法的に有効になります。

  1. 財産の処分方法
  2. 「自宅は妻に、預貯金は長男に」と、誰に相続させるか指定できます。
    相続人だけでなく、第三者や公益法人などへの寄付もできます。

  3. 相続分の指定
  4. 子供がいても、妻に全て相続させるなど、法定相続分を変更できます。
    ただし相続人には最低限受け取ることができる権利の遺留分があります。
    遺留分を侵害する遺言書の場合は、将来相続人が遺留分を請求してくる可能性はあります。

  5. 負担付遺贈の指定
  6. 「100万円を遺贈するので、ペットの犬を引き継いでほしい」というように、条件付きで財産を引き継がせることができます。
    もし100万円だけもらい、ペットの犬を放置することがあれば、他の相続人が遺言の取消しを家庭裁判所に請求できます。

  7. 遺産分割の禁止
  8. 死後最長5年間は、遺産分割を禁止するという遺言を残すことができます。
    例えば事業を存続させるため、事業で使用していた不動産を分割させたくないケースです。

  9. 子供の認知や廃除
  10. 何らかの理由で生前に認知が難しく、遺言で子供を認知ができます。
    法的に親子関係を生じさせたり、相続させたくない相続人を廃除することができます。

  11. 遺言執行者の指定
  12. 確実に遺言を実行してくれる、遺言執行者を指定することができます。
    遺言書の内容に不満を持つ相続人による妨害などを避けるために、遺言執行者を指定します。
    遺言執行者は誰でもなることはできますが、トラブルが予想させる場合は専門家を指定した方がよいでしょう。

  13. 未成年後見人の指定
  14. 幼い子供の看護や財産管理を行う後見人を、遺言で指定できます。
    未成年後見人がきちんと管理してくれるか心配な場合は、未成年後見監督人を指定することもできます。

  15. 祭祀承継者の指定
  16. 墓地、仏壇、位牌など、先祖のまつるために必要なものを引き継いでもらう人を、遺言書で指定できます。
    家族の仲が悪い場合や、宗教上の違いで争いになることもあるため、祭祀承継者を指定しておいた方がよいでしょう。
    また管理する費用は祭祀承継者が負担するため、多めに相続させることも考えられます。

  17. 相続人相互の担保責任の指定
  18. 財産に欠陥などがあった場合、負担割合を遺言で指定できます。
    財産の一部が壊れており財産価値がない場合は、その穴埋めをどの相続人が負担するのか指定します。

  19. 遺留分の減殺方法の指定
  20. 遺留分の支払い要求から、どの財産から支払うと定めることができます。


    遺言書に預貯金残高を記載すべきか?

    預貯金は、残高が変動する可能性があります。
    残高を超える部分は、遺言の対象から外れます。
    未分割遺産として残るため、残高は書かないでください。
    預貯金は、銀行名と支店名を記載しますが、合併などで名称が変わっても、問題はありません。
    しかし、銀行がつぶれてしまった場合は、預貯金の部分は無効になってしまいます。
    ある特定の相続人に全て相続させるのであれば、念のため「その他の預貯金を相続させる。」という文言も記載しておきましょう。


    押印の無い遺言書について

    遺言書に押印が無ければ、無効な遺言書です。
    しかし、生前に内容を開示していたのであれば、死因贈与契約の成立が認められる可能性があります。
    また無効な自筆証書遺言でも、一応検認手続きをしておいた方がよいでしょう。
    他の相続人に隠匿したと疑われ、「相続欠格だぁー!」と言われると面倒ですから。


    遺言書を作成しても財産を使えるか?

    遺言書を作っても、その後の生活が拘束されることはありません。
    自分の財産は、自分がどう使おうが自由です。
    将来自分が亡くなった後、財産が残っていれば遺言書どおりに相続人に引き継がれるだけのことです。

    もし土地を長男に相続させるという遺言書を残した後、その土地を売ってしまった場合は、長男に土地を相続させるという遺言が撤回されたということになります。
    きっと相続が発生したときに、長男はがっかりすることでしょう。
    そういうことにならないように、大きく財産に変化が生じたときは、遺言書を書きなおした方が良いでしょう。
    相続人の誰かが亡くなったり、子供が生まれて相続人が増えた場合なども、遺言書を新たに作成しなおした方がよいです。


    複数の遺言書がある場合

    複数の遺言書が見つかった場合、自筆証書遺言や公正証書遺言等の種類に関係なく、日付が新しいものが有効になります。
    遺言者は遺言書を書き直したり、書いたことを忘れて、また書いてしまうこともあります。 古い遺言書と新しい遺言書を比較し、内容に矛盾しない部分については、古い遺言書も有効になります。
    例えば古い遺言書に、自宅の相続について書かれているのに、新しい遺言書には自宅については全く書かれていないケースは、古い遺言書の内容も適用されます。

    同じ日付の遺言書が出てきた場合も、遺言書を比較し、矛盾がなければどちらも有効です。 もし同じ日付の遺言書で、矛盾が発生していれば、相続人の間の話し合いで決めます。
    遺言書が発見され、遺言者が書いたことが疑わしい場合は、「遺言無効確認訴訟」を起こすことができます。
    筆跡鑑定を行ったり、当時の医療記録や介護記録などを準備します。
    遺言書が複数あると相続人が混乱してしまいます。
    古い遺言書は撤回することを明記のうえ、古い遺言書を破棄するほうが良いでしょう。


    遺言書を破棄した場合

    遺言者が故意に遺言書を破棄した場合、遺言を撤回したとみなされます。
    後に書いた遺言書を破棄すると、前に書いた遺言書が有効になります。
    遺言書を発見した相続人が遺言書を破棄した場合、相続人の欠格事由となり相続人の権利が無くなります。 また私文書破棄の犯罪になります。


    相続人以外へ相続したい場合

    相続人以外に遺産を渡したい場合は、「遺言書」を残す必要があります。
    その場合は第三者の氏名と住所だけでなく、本籍地も記載しておいた方が安心です。
    相続人と第三者とは面識がない場合、その第三者の住所を探さなければなりません。
    もし第三者が引っ越しをしていた場合、5年以内であれば住民票の除票を取得することで住所がわかります。
    しかし5年を経過すると、住民票の除票は取得できなくなります、
    そこで、第三者の本籍地を記載しておけば、住所が変わっても戸籍の附票を取得することで、現住所を知ることができます。
    住所に比べ、本籍地を変更する可能性は低いでしょうから、本籍地も記載しておいた方が良いでしょう。

    住民票の除票とは?
    住民が転出や、死亡した場合は住民票が消除されます。この消除された住民票のことを「住民票の除票」と呼びます。

    戸籍の附票とは?
    本籍地の市町村において、戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されています。

    遺贈すると相続させるの違い

    遺言書により財産を渡す際には、「遺贈する」と「相続させる」があります。
    「遺贈する」は財産の無償譲渡で、相続人及び相続人以外にも記載ができます。
    「相続させる」は法定相続人に対して財産を移転させることで、相続人のみに記載ができます。
    「遺贈する」は、「相続させる」と比べて以下の点で不利になります。

    1. 遺贈による所有権移転登記は、他の法定相続人全員又は遺言執行者の協力が必要
    2. 対象財産が借地権・借家権の場合、遺贈による権利移転では貸主の承諾が必要
    3. 対象財産が農地の場合、権利移転に農業委員会又は都道府県知事の許可が必要

    以前は不動産の登記申請にかかる登録免許税が、法定相続人に対しても「遺贈する」は「相続させる」の5倍とされていました。 現在は同率とされております。

    遺言書で相続人に対して「与える」とか「譲る」と書かれている場合は、「相続させる」という解することができます。
    しかし、「遺贈する」と書かれている場合では、遺贈でしか解釈できないとされています。





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