遺言書がない場合、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)が必要?

全員の話し合い

2020/2/23 更新


遺言書がない場合や、遺言書があっても中途半端な内容により、相続人同士の話し合いが必要になります。
故人名義の預金を解約したり、不動産の名義変更には、次の手続きが必要です。

  1. 相続人と相続財産を確認する。
  2. 相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、具体的に財産の行方を決めます。
  3. 話し合いの結果を遺産分割協議書に残し、相続全員が実印を押す。
  4. 遺産分割協議書を使用し、預金の解約や不動産の名義変更をします。

遺産分割協議の揉め事は、財産が欲しいという単純なものばかりではありません。
価値観の違い、長年抱えている想い、複雑な事情で生じることが多くなります。

法律で定められている法定相続分は、あくまで相続できる割合を決めているだけです。 具体的には、相続人全員による話し合いで決めることになります。

預貯金や現金は分けやすいのですが、不動産は分割が困難になります。
分け方には、以下の4種類があります。


  1. 現物分割
  2. 被相続人の財産をそのまま引き継ぐ方法です。
    自宅は長男、株式は次男、預貯金は長女のように、各財産をそのまま相続人に分けます。
    メリット :分割方法がわかりやすく、財産の現物を残せます。
    デメリット:各財産の価額が異なるため、相続人の間に不公平が残ります。

    現物分割


  3. 共有分割
  4. 相続人全員で、相続財産を共有にします。

    相続不動産は共有にすることは避けた方が良いです。
    相続した人が将来亡くなった場合に、さらに相続人が増えることになるためです。
    そうなると、その不動産を売りたい場合に、全相続人の承諾が必要となります。

    誰も住む予定がなく、相続人全員が売ることを望んでいる場合は、一旦共有することも良いでしょう。
    共有で相続し、「換価分割」でお金を分ける方法です。
    不動産仲介手数料、測量費用、解体費用、登記費用、固定資産税等租税公課等、売るのにかかる費用も検討が必要です。

    メリット :公平に分割ができ、財産の現物を残せます。
    デメリット:財産を売却する場合等に、全員の合意が必要です。次の相続が発生すると、共有者が増えてしまいます。

    共有分割


  5. 換価分割
  6. 相続財産を現金化し、それを相続人で分ける方法です。

    長男が長年居住してきたことから家屋の取得を希望しており、次男は売却して代金を分配すべきという意見で分かれている場合。
    長男は審判手続きで解決をしようと考えていても、長男が代償金を支払うだけの資力が証明できなければ、換価分割とされる可能性が高くなります。

    メリット :公平に分割ができます。
    デメリット:財産の現物が残らず、売却に手間と費用がかかります。相続人全員に所得税と住民税がかかります。

    換価分割


  7. 代償分割
  8. 不動産のように分けにくい財産を、特定の相続人に相続させ、他の相続人に法定相続分に相当する代償金を支払います。
    メリット :公平に分割ができ、財産の現物を残せます。
    デメリット:現物を受け取った相続人は、他の相続人に支払う資金が必要です。

    代償分割



相続人の仲が良ければ、遺産分割でもめることはないでしょう。
しかし、相続手続きは膨大な手続きを行うことになります。
預金口座がたくさんあったり、親から引き継いだ不動産の名義変更をしていなかった場合は、さらに負担となります。

相続人に行方不明がいたり、認知症の方がおられたり、未成年の方がおられた場合も手間がかかります。
財産が多くなくても、残された家族に負担をかけないようにするためには、生前に財産を整理したり、遺言書を作るなどの相続対策が有効です。


遺産分割協議で決めること


遺産分割協議書に書くこと

遺産分割協議書を作成し、合意文書にすることで、後日トラブルになることを防ぎます。
不動産や預貯金等の相続手続きで、必要とすることがあります。
預貯金の場合は、金融機関独自の同意書を使用することも多いです。

不動産の場合は、登記簿謄本を取得し、地番や地目などを正確に記載しましょう。
預貯金の場合は、残高証明証を取得します。

全ての財産をまとめて1通の遺産分割協議書に記載してもいいですし、必要な財産ごとに作成することもできます。
相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
相続人の人数分作成し、各人が保管するようにします。
遺産分割協議書の書式は、特に決まりはありません。

必要書類として、「被相続人の出生時から死亡までの全ての戸籍謄本」「相続人全員の戸籍謄本」「相続人全員の印鑑証明書」が必要です。

記載すべき事項は、以下になります。



遺産分割の仕切り役について

遺産分割の仕切り役は、各相続人とコミュニケーションが取れる人が良いでしょう。
協議場所、日時指定、必要書類の準備など、各相続人と連絡を取りながら進めていく必要があります。

遺産分割協議は原則、相続人全員が集まって行います。
しかし相続人が遠くに住んでいたり、忙しい等の理由で、話し合いは電話で済ませてから遺産分割協議書を郵送でやりとりするケースもあります。
相続人ではない人は、遺産分割協議に同席しないことをお勧めします。

遺産分割協議を行う時期も、決めなくてはなりません。
相続税がかかる場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内という申告期限があります。
相続税がかからない場合も、年内に終わらせて新年を気持ちよく迎えたい時期を選びましょう。



遺言書と異なる遺産分割は出来るのか?

遺言書の内容は、相続人全員が納得するものとは限りません。
それでも相続人に一人でも遺言書通りの分配を希望していれば、遺言書通りに遺産分けすることになります。

いくつかの条件はありますが、遺言書と異なる遺産分割協議を行うことは可能です。


不動産を相続させると書かれている遺言書を、遺産分割協議にする場合に注意点があります。
不動産の登記をする場合、まずは遺言書どおりの所有権移転登記をします。

その後、「贈与」や「交換」の所有権移転登記をするという、二段階の登記手続きが必要です。 登録免許税も、二段階分の納付が必要です。

遺言書を登記所に提出せずに、遺言書と異なる内容の遺産分割協議書のみ提出して登記をしたら、公正証書原本不実記載等罪になりかねませんので、注意が必要です。

単に相続分の指定をしている遺言書であれば、遺言書と異なる遺産分割協議書によって、直接に所有権移転登記を行うことができます。



遺産分割協議がまとまらなかったら?

遺産分割協議がまとまらなかったら、家庭裁判所の遺産分割調停で解決を試みます。
調停では、「調停委員」という仲介により、相続人の間の意見が交換されます。
家庭裁判所の裁判官と、家事調停委員から成る立ち合いの下で行います。

指定日に、申立人と相手方がそれぞれ部屋で待機し、順番に調停委員のいる部屋に呼び出されます。
相続人同士が顔を見合わさないため、感情的な対立を避けることができます。
一度の調停で合意ができなければ次回に持ち越され、合意の成立が見込まれる場合は何度も繰り返されます。
調停で合意すれば、「調停調書」を作成して、その内容に基づき遺産分割を行います。

調停は、調停委員会の仲介で問題の解決をめざすもので、調停委員が分割方法を強制することはありません。
そのため、決着がつかない場合は、自動的に審判に移行します。

審判では、各相続人が自分の主張をし、立証していきます。
家庭裁判所の裁判官は、様々な諸事情、相続財産を考慮しながら分割方法を決めます。
審判が確定したら、「審判書」と「確定証明」で、各相続手続きを行うことができるようになります。
裁判官が下した審判は、法的強制力があるので、相続人はその内容に従います。

審判の内容に不服であれば、2週間以内に「即時抗告」の申立てを行い、高等裁判所で争うことになります。


行方不明の相続人がいる場合

行方不明の相続人がいる場合、死亡が確認されない限り、行方不明者にも相続する権利があります。
行方不明者を除いて遺産分割協議を進めても、遺産分割協議が成立したことにはなりません。

そこで、家庭裁判所に代理人となる「不在者財産管理人」の選任を申立て、その管理人を加えて遺産分割協議を始めます。
この申立てができるのは、「行方不明者の配偶者」「他の相続人」「債権者など不在者の利害関係者」「検察官」に限られています。
不在者は、1年以上行方不明が続いている人のことになります。

通常は、利害関係のない被相続人の親族が、代理人として候補者に選ばれます。
もしそういう親族が見当たらない場合は、弁護士や司法書士等の専門家が、代理人として選任されます。

不在者管理人は遺産分割協議に参加し、不在者の財産を管理します。
そして不在者が戻ってきたら、取得する予定の財産を受け取ります。

行方不明の期間が7年以上の場合は、行方不明の相続人を死亡したものとする「失踪宣告」の申立てをする方法があります。
家族などの利害関係者が、家庭裁判所に「失踪宣告」の請求をします。
失踪宣告をさせると、法律上は死亡したことになります。

死亡時期の考え方は、最後に生存を確認できた時点から7年後の時点になります。
死亡として確定すれば、遺産分割協議を行うことができます。
被相続人と行方不明の死亡確定の日付の先後で、代襲相続人が変わってきます。

失踪宣告をした後、行方不明者が現れた場合、家庭裁判所に報告することで、失踪宣告は取り消されます。
今更、遺産分割の無効も認められないため、価額賠償などの方法で対処することになります。


遺産分割後に遺言書が見つかったら?

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、遺産分割協議はどうなるでしょうか?
遺言書の内容が、遺産の全部又は一部が遺産分割協議の内容と被る場合は、遺産分割協議は原則として無効です。

しかし、遺言で遺産を受け取ることになっている方が権利を放棄し、遺産分割協議どおりでよいとしたときは、遺産分割協議は無効になりません。
相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割協議は成立します。

ただし遺言書の内容で、相続人の廃除や廃除の取り消しが認められ、相続人に変動が生じると遺産分割協議は無効です。
子どもを認知するという遺言書の内容だった場合は、認知によって相続人は増えます。 しかしその場合は、遺産分割協議は有効です。
既に遺産分割協議が成立した相続人たちは、認知された子どもへ相続分に相当する金銭を支払うことになります。


遺産分割協議前に財産を処分してしまったら?

遺産分割前の遺産は、相続人全員の共有状態になります。
勝手に不動産を単独所有の登記をされた場合、他の相続人は自分の持ち分に応じて、登記の一部を自分名義に回復する請求ができます。(更正登記の請求)

金銭を勝手に処分されると、他の相続人は「不当利得返還請求」などで取り返すしかありませんでした。
そこで、2019年7月1日から、法律の改正により「遺産分割前の財産処分」が施行されました。
処分された財産を遺産分割時に存在するものとして、遺産分割することができます。


(例:相続人3人が等分の遺産分割だった場合)
2,000万円(遺産分割時の残高) + 1,000万円(処分された財産) = 3,000万円(みなし遺産)

相続人A(処分した人)
3,000万円 x 1/3 - 1,000万円(処分した財産) = 0円

相続人B 3,000万円 x 1/3 = 1,000万円

相続人C 3,000万円 x 1/3 = 1,000万円


条件として、財産を処分した相続人を除く、共同相続人全員の同意が必要です。
財産を処分した人の同意は必要ありません。





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